最近、インクルーシブデザインという言葉を聞く機会が少し増えてきたように感じます。
インクルーシブデザインとは、簡単にいうと、
年齢、障がい、体格、性別、国籍、生活状況などにかかわらず、できるだけ多くの人が使いやすいように、最初から当事者の声を取り入れて考えるデザインのことです。
もう少し身近な言い方をすると、
「一般的な人向けにつくって、あとから困る人に対応する」のではなく、
最初から”使いにくさを感じやすい人”の視点を入れて考えていく、という発想に近いのだと思います。
バリアフリーとは、少し違います
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似た言葉に、バリアフリーやユニバーサルデザインがあります。
バリアフリーは、段差をなくす、手すりをつけるなど、すでにある不便や障害を取り除く考え方です。
ユニバーサルデザインは、できるだけ多くの人にとって使いやすいものを目指す考え方です。
それに対して、インクルーシブデザインには、
実際に困りごとを感じている人と一緒に考えていく、という特徴があるように思います。
つくる側が
「たぶんこうした方がいいだろう」
と想像だけで決めるのではなく、
実際に使う人の声を聞きながら、
「どこで困るのか」
「何が不安なのか」
「どんな動作が負担になるのか」
を見つけていく。
そうした積み重ねが、使いやすさにつながっていくのかもしれません。
住宅で考えるインクルーシブデザイン
住宅で考えると、インクルーシブデザインは、何か特別なものというより、暮らしの中に自然に入っている考え方でもあるように感じます。
たとえば、
玄関の段差を少なくすること。
廊下やトイレに、将来手すりをつけられる下地を入れておくこと。
夜中にトイレへ行く動線をわかりやすくすること。
小さな子どもでも使いやすい収納にすること。
年を重ねても寒さや暑さで体に負担がかかりにくい家にすること。
車いすだけでなく、ベビーカーや荷物を持った人にも入りやすい玄関にすること。
こうしたことも、広い意味ではインクルーシブデザインにつながっているのではないでしょうか。
つまり、これは障がいのある方だけのための考え方ではありません。
子育て中の人。
高齢の人。
体調が悪い日。
荷物が多い日。
ケガをしている時。
疲れて帰ってきた時。
人はいつも同じ状態で暮らしているわけではありません。
だからこそ、誰かにとってやさしい工夫が、結果として多くの人にとっての暮らしやすさにつながっていくのだと思います。
「介護っぽい」ではなく、自然に安心できること
家づくりやリフォームの現場では、
手すりや段差の少ない計画、引き戸、広めのトイレなどが、どうしても「介護のためのもの」と受け取られやすいことがあります。
もちろん、将来への備えとしても大切です。
ただ、それだけではなく、もっと自然に考えてよいものなのかもしれません。
たとえば手すりも、
転ばないためだけではなく、
立ち上がる時に少し体を支えたり、
階段で安心感を持てたり、
暗い時間帯に体の位置を確認しやすくしたりします。
引き戸も、車いすのためだけではありません。
小さな子どもがいる家庭でも使いやすく、
洗面所やトイレなどの限られた空間でも動きやすくなります。
“いかにも福祉”という形ではなくても、
暮らしの中に自然に安心が入っていることは、住まいにとって大きな意味があるように思います。
性能も、インクルーシブデザインの一部かもしれない
住宅では、断熱・気密・換気・湿度・空気質といった住環境の性能も、インクルーシブデザインと無関係ではないように感じています。
というのも、寒さや暑さに強い人ばかりではないからです。
高齢の方。
小さな子ども。
持病のある方。
冷えやすい方。
疲れが取れにくい方。
家の中の温度差が大きいと、体への負担も大きくなります。
特に冬場の浴室やトイレ、脱衣室の寒さは、安心して暮らすうえで無視しにくい問題です。
「誰でも快適に過ごしやすい家」を考えるなら、
見た目や間取りだけではなく、
温度差が少ないこと、空気がきれいなこと、湿気がこもりにくいことも大切な要素になってくるのではないでしょうか。
見えない部分の性能が、暮らしの安心や健康を静かに支えていることは、意外と大きいように思います。
デザインは、見た目だけではない
デザインというと、どうしても見た目の美しさを思い浮かべることが多いかもしれません。
もちろん、見た目の心地よさも大切です。
毎日過ごす家だからこそ、好きだと思える空間であることは、とても大事なことだと思います。
ただ、デザインはそれだけではないはずです。
使いやすさ。
動きやすさ。
迷いにくさ。
疲れにくさ。
危なくないこと。
安心して過ごせること。
こうしたことも、住まいにとっては大切なデザインの一部なのではないでしょうか。
インクルーシブデザインという考え方は、
「かっこいい家」を考えることと矛盾するものではなく、
「暮らしの中で困りにくい家」を考えるための視点のひとつなのだと思います。
まとめ
インクルーシブデザインとは、
特別な誰かのためだけのデザインではなく、
実際に困りごとを感じている人の声を取り入れながら、より多くの人が使いやすく、安心して過ごせるように考えていくデザインなのだと思います。
住宅に置き換えると、
段差を少なくすること。
動線をわかりやすくすること。
手すりや下地を自然に計画すること。
寒暖差を減らすこと。
空気や湿度を整えること。
そうした一つひとつが、暮らしやすさにつながっていきます。
家は、元気な時だけ使うものではありません。
疲れている時も、年を重ねた時も、家族の形が変わった時も、毎日使い続ける場所です。
だからこそ、誰かにやさしい家は、きっとみんなにとっても暮らしやすい家になっていく。
そんなふうに考えると、これからの家づくりの見え方も少し変わってくるのかもしれません。
家づくりをお考えの方は、ぜひそんな視点もお気軽にご相談ください。



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